答えるひと:村上春樹、新潮社(2015)

◆悪しき物語に対抗するには、善き物語を立ち上げていくしかない。
◆身銭を切るって大事。他人のお金を使っていては何も身につかない。本当に大事なことは多くの場合、痛みと引き替えにしか手に入らない。
◆推敲は最大の趣味です。最初はだいたい流れのままにさっと書いてしまって、あとからしっかり手を入れる。最初からみっちり書こうとすると、流れに乗るのが難しくなるので。
推敲にとってもっとも大事なのは親切心。読者に対する親切心(サービス心でなく親切心)。それを失ったら、小説を書く意味なんてないんじゃないかと僕は思っている。
◆(自分のことを好きになれない、という質問に対して)自分のことを好きになる必要なんて何もない。まず、自分に何ができるか考えて下さい。そして、それを少しでもいいからやってみて下さい。手や身体を動かして。
◆(小説は生産性が低いという意見に対して)でも生産性の低いものって、結構必要。
生産性の高いものばかり追求していると、人間がだんだん薄くなる。どうしてかわからないけど、なんか確実に薄くなる。
◆人生は長距離レースみたいなもの。長い時間をかける勝負。途中で誰かに抜いたり抜かれたりは、大勢にほとんど関係ない。
自分のペースを守ってゴールを目指すことが何より大事。途中経過は気にしないで自分のペースをつかんで下さい。そうすれば、そんなにひどいことにはならない。
優勝はできないかもしれないけど、後悔はしない。それが大事。
荷物を減らすためにとうとう処分しますが、この本、味わい深くて、本当によいのです。